大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和51年(ム)12号 判決

再審原告(原告・被控訴人) 保科藤三郎

再審被告(被告・控訴人) 野口力

右訴訟代理人弁護士 柏原晃一

同 三好徹

主文

本件再審の訴えを却下する。

再審費用は再審原告の負担とする。

事実

一  再審原告は、「当庁昭和四九年(ネ)第四七〇号事件の判決(以下原判決という。)中再審原告の再審被告に対する金二四万〇三八〇円及びこれに対する昭和四一年一二月三日以降年三割六分の割合による金員の支払請求を棄却した部分を取り消し、右部分につき横浜地方裁判所昭和四八年(ワ)第二〇六号事件の判決に対する再審被告の控訴を棄却する。」との判決を求め、再審被告は、主文と同旨の判決を求めた。

二  再審原告は、再審の事由として、「原判決は、訴外協和産業株式会社振出に係る額面金二五万円の約束手形による本件貸付は、再審被告でなく訴外寺本恵に対してなされたものと認定して再審原告の右貸付金の請求を棄却し、なお、原判決は再審原告は右手形を高木健三に譲渡し、同人の代理人土井永市弁護士と訴外寺本の間で、右手形に係る本件貸金債務も弁済されたと認定している。しかし、上記認定は事実誤認であって、とりわけ後者の認定については、これに反する客観的な証拠(土井弁護士の調査記録、寺本名義の書面等)を再審原告が所持しているのに、原審では寺本恵の証人尋問をすることなく上記の判断をした。これは、判決に影響を及ぼすべき重要なる事項に付き判断を遺脱したもので、民事訴訟法四二〇条一項九号の再審事由がある。」と述べた。

理由

一  記録によれば、再審原告のいう客観的証拠は、原審で法廷に出されておらず、また寺本恵の証人尋問は、再審被告の申請によって採用されたが、二回にわたる不出頭などのため取り消されたことが認められるのであって、原審の手続に再審原告のいう不当は認められない。のみならず、再審原告のいうような事実の誤認あるいは証拠申請の不採用は、民事訴訟法四二〇条一項九号の判断遺脱にはあたらないものである。

二  したがって、本件再審の訴えは不適法として却下を免れず、再審費用の負担につき、民事訴訟法九五条及び八九条を適用する。

(裁判長裁判官 松永信和 裁判官 糟谷忠男 浅生重機)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例